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迷子 [小咄]

※ファンタジースキーさんに100のお題参加作品


 ある年の初夏、移動遊園地が町にやってきた。
 二つ年上のハクロはこんな時は大人から頼りにされる引率係だった。だけど、広場に並んだ色とりどりの建物やテントを見上げ、目をまん丸にしてるのはあたしと同じだった。

 その中で、なんでミラーハウスに入ることになったのかは覚えてない。いくつか、振り回されたり動物とふれあったりするようなもので楽しんだあと、気分を変えてみようってことになったのかも知れないし、ユユファがいきなり突進して行ってしまったからだったかも知れない。

 あたしは両脇をぺたぺた確かめながら進む。角をいくつか曲がって、低くなった通路をくぐり抜けて、鏡だけの世界で時間も進む。ハクロは後ろから来ている。ユユファの三つ編みが揺れているのが、どこかの壁に映る。町の誰かの影。あたしは声を上げる。
「ユユファ、あんまり先行かないで。はぐれる」
 でも、一緒についてきているはずのハクロは何も言わない。
 足音だけがついてくる。
 ユユファの姿はもう見えない。
「もう……ハクロ」
 振り返った私の目に飛び込んだのは、いつもの見慣れた白い髪じゃなく、町の小僧の一人のびっくりしてる顔だった。
「お、鬼っ子」
 もろに目が合うと、泡食って逃げ出していく。途中でどっかの鏡にぶつかったらしい、ガンって音がした。いい気味だ。
……じゃない。
 あたしは鏡だけが広がる世界で一人っきりだった。
 左右を見れば続いてく光景にひたすらあたしの姿が映ってる。ため息。あたしは鏡が嫌いだ。
 進むか戻るか迷って、さっきの悪ガキに鉢合わせするのは嫌だなと思った。仕方なく、出口に続いているといいなと祈りつつ、探索を続ける。
 すぐに床が円形の、ホールみたいなつくりのところに着いた。どうやら行き止まりだ。
 きびすを返そうとすると、そのホールにもう一人あたし以外の人がいたのに気がつく。
「お姉さん、ここ行き止まりだよ」
 その人は大きな帽子を被っている。中途半端な灯りのせいで、顔立ちとかはよく見えないけど、見慣れない人だ。町の外から来た人だろうか。
「そっか」
 その人があたしを見たのを雰囲気で感じる。
「じゃあ戻ろっか」
 あたしが先に立って通路に戻れば、その人はすぐ後ろをついてくる。
「お姉さん、一人で来たの?」
 あたしはなんとなく、会話を続けなきゃいけないような気がして聞く。
「うん。あなたは? お母さんとはぐれた?」
「……そんなに子供じゃない」
「じゃあ?」
「ともだち」
 そっか、とお姉さんはつぶやいて繰り返す。
「ともだちと来たんだ」
「うん。どこにいるかわかんないけど」
 あたしの足音だけが響いて鏡に跳ね返り、遠くまで流れていく。
 悪ガキが逃げていったのはこのへんだったろうか。
「──その子たちと」
 お姉さんが言う。
「約束してる?」
「なんの?」
「はぐれたときの、どこで落ち合おうとか」
「してないけど……たぶん出口まで行けば、一人は待ってると思うし」
「ほんとに?」
 あたしは振り返る。お姉さんの姿はすぐ横、思ったよりも近くにあってひるんだ。
「それで大丈夫なの? ちゃんと会える?」
「会えるよ……今までだってそうしてきたもの」
 近くで見上げたらお姉さんの肌の色は思ったよりも白かった。
「いいのかな、それで」
 そして気づく。
「そうやって二人のところに戻ってもいいのかな。いつまでも?」
 その人は鏡の中に立っている。
 どこにいるのか、振り返るけれど……どの鏡にもその人は映っていて、そしてその人はどこにもいない。
「二人がいるところならいつでも帰る場所って言えたけど、今は、──
 ほんとは、どうなんだろう?」
 
「ヴィオラ。交代。起きて」
 あたしは毛布をはねあげる。闇の帳を切り裂いて焚き火が一つ。
「うわー……なんだろ、すごい寝汗かいた」
「夢見でも悪かった? 水浴びしてくる?」
「ん……いいや。火に当たってれば乾くと思うし。
 なんの夢見てたかも忘れちゃったし」
 
End.

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タグ:ヴィオラ

光りさす庭 [小咄]

「ファンタジースキーさんに100のお題」から、ヴィオラさんの話。小説仕様です。

 お題選びとマッチングをarchさんにお願いしました。
 こんなすごい希望あふれるタイトルなのに、中身は……えと、仕様です。

 いつものFC2 / いつもの「らのば」

……しかし、これを読むとヴィオラさん、問99問題(※100の質問で99番目の問いへの答え方が、不幸度に関係しているという話題)なんて友情パワーで軽く乗り越えられそうですね……。
 実際、どうなんでしょう(笑)

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赤心に縹心を重ぬ [小咄]

 裏話に提出しました。

 ヴィオラさんのお話です。ユユファがハクロをかばってうんたら……という一件のちょっと前ぐらいそれ

 赤心は包み隠さない心という意味。赤裸々な心なんでしょうか。縹志は造語です。アザレアさんにいただいた二つ名、『二藍』の染め方から来ております。重ねた縹のほうを強くしていくことによって、人は大人になるのね的な。

 というわけで、のっけからかわいそうな話。ほんとは冒頭部は師匠との関わりから書いてみようと思っていたのですが、夜話には長すぎるだろう(サクッと読めるのがいいよね……)と変更した結果がこれ。
 うん、不遇だ。まじ

 師匠&兄弟子以外の設定はお二人と共通です。相談させていただいたのですが、我ながら小気味良いほどにひどい話にしたなあ……という自覚は……あります……あせ
 例の瞬間風速でしたね……とはいえ今回は、リアル・ロールプレイヤーというよりはどう見てもルーニーです……。
 だがそれは反省すべきところではない[exclamation×2](笑)


 反省その1。アクション書いたことないので、あれですね……

 反省その2。ヴィオラは理屈っぽいですね……

 きっと心の中で常に、言い訳やツッコミをしてるんだろうなあ……なみだ


 3人組、IRC上ではまだ揃ったことがありません。どうなるのかなー(笑)
 無邪気ではいられないわーっていうあたりが王道だけれども、ユユファとハクロですからねぇ……ほんとどうなることやらむふ

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タグ:ヴィオラ

第2.5話 [小咄]

 ブラッキーと名乗ったハーフエルフの少年は、少しかがんで、倒れた暗黒司祭の胸元から何かを剥ぎ取った。踏み込んできた衛視にそれを渡し、薄く笑う。

「これも同じ聖印だ。そうだろう?」

 小さなコインに、彩色された絵が描かれている。右手が、黒いものをつかんでいるようなデザインだった。
 組み木の内側から出てきたものと同じだった。

 ああ、とうなずいてマークは問いを返す。

「懐かしい、と言っていたが」

「何度か追いかけっこした経験があってね。あなた方が協力をしてくれるというなら、出せる情報もある。   だが、今じゃない」

「そう言うなら、そうなのだろうな」

 謎の少年の言葉を鵜呑みにして、振り回されるほど衛視も暇ではなかった。

「しかし、オランなら……、確か話を聞かせてくれる導師がいたはずだね。西部から流れてきた人物で、ゴルドといったかな」

……彼は大きな瞳にいたずらっぽい光を宿して、衛視に手を振った。

「失礼するよ。友人と飲む約束があるのでね」



     ◇

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TRPGじゃない話 [小咄]

 こんなもん書きました。[次項有]いつものFC2小説一気読みor縦書きPDFファイル

 2006の暮れから年明けちょっとぐらいまで、月光でやってたコンバート学園物キャラチャが元ネタです。なんかそういうネタがあると、常に一枚噛んでる気が我ながらするのですが、ここできちんと言っておきます。
 学園物が好きなんじゃないです。

 コンバートが好きなんです。

……よし、スッキリ[ぴかぴか(新しい)]


へそ曲がり達の妖精譚-フェアリーテイル-


 元々は読みづらい冒頭部みたいな短文を、キャラチャ数回ごとにブログにアップしていくことで、分かり難い直と妖精さんの内面描写を連載していく企画でした。
 なので、登場人物もみんな何か(誰か)からのインスパイアです。

 もし読まれることがございましたら、面白かったキャラやシチュエーション、せりふ、逆に引っかかった点などお聞かせいただければ幸いです。
 とりあえず、この記事と本体読んでくださった方へ、オマケです(o'ω')

 では恒例の、あとがき語りいきます。折りたたんでおくので興味のある方はどーぞにこ

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『今ここ』 [小咄]

推奨BGM:雨を連れゆく


   その人は、俺に、自分の教えた歌を歌うな、と言う。
『いいかい、私の教える歌は《覚えた》だけじゃあ歌ってはいけないものなんだ』
 そんなの、聞いたことない。
『お前は、歌い手だからね。そうでなければ、わかっていない歌をそのまま歌うことを止めはしない』
 わかっていない? 書いてあることが全部じゃないの?
『海を知らないものが、海を歌えるかい?』
 そんなものだ、って思って歌えばいいんじゃない?
『そうやって歌われた歌は、《そんなもの》でしかないだろうね』
……じゃあ、吟遊詩人はさ。みんな愛を歌うけど、奴らはみんな愛を知ってるってわけ?
『本当にいい詩人なら、そうだと思うよ』
 ふうん。
『私が教えてやった歌の中で、お前が知っていると言えるものも、あるだろ?』
……森と、鎮魂なら……かなあ……
 たいていのもの、見たことあるよ、とは、何故か、言わなかった。
 
……鎮魂、か。
 口からすとんとこぼれ落ちた、その言葉を胸で繰り返した。




 小さい頃は、妹と母親と三人でエルフの里で暮らしてた。まあ、迫害されながら、と付け加えてもいいかもしれない。
 母親は、自分の寿命が長くはないことに気づいていて、自分が死んだあと、俺達兄妹が酷い目に遭うことを考えて、……俺が十歳ぐらいの頃、だったかな。
 子供を連れて里を出た。まあ、人間社会に慣れさせることが、子供にしてやれる最後のことだと思ってたんだろう。
 そんなことを、言っていた。

 
 母親が死んだのは、それから五年は経ってなかった、と思う。
 最期の頃には、俺は酒場で母親に教わった歌を代わりに歌って、薬代や生活費を稼ぐようになっていた。
 その生活は、妹と2人きりになっても変わらず。
 そのうちに、『もっとお金あげるよ』って言われて兄妹揃って金持ちの家に厄介になったりもして。
   そういうのの意味に、鈍感だったら、いっそよかったのかなぁ、と思うこともある。




 何軒めかで、若いおばさんの家の専属バードになってたときのことだ。そのひとは、流れるような黒い髪を誇りにしていたのを、覚えている。
 俺は、母親に最期まで妹のことを頼まれてたから、そのひとにどこに連れて行かれ、何をもらうにしても、半分は妹にいいとこがいくようにしてた。
 そしたら、細い眉を逆立てて、その人が言うんだ。『そんなじゃ、妹さんだって好きに生きられないでしょう?』
 
 その言葉の通り、妹はそれから数日のうちに、別れの言葉を残して去っていった。
 まあ、俺がこんな商売だから、仕方ない。
 妹とは、それきり。
 何をしてるのかも、どこにいるのかも、知らない。




 その女主人とも別れ、いろんなとこを転々とした。しばらくは、……そうだな、最底辺の宿で客を取ったりも、してた。
 その頃は母親に教えてもらった歌じゃなくて、いつも客が好むような安っぽい愛の歌をかき鳴らしてた。
 昔は、声がよく通ることとか、綺麗に和音が出ることとかも気にしてたけど、そんなもの、もう価値がないものだってわかってた。
……客が好む目つきとか、服装、気を惹くような言葉、そういうのばっかり上手くなった。



 身なりのいい兄ちゃんが、俺を呼んだ。
 お兄さん真面目そうだけど、楽士を買ったりするんだ? って、訊いたら。
『いや、私じゃない。
 とある老人がいる、衣食住の面倒はみるので、しばらく一緒にいてやってくれないか』
   そう、言われた。



 もう、じいちゃんかばあちゃんかもわからないような、ばあちゃんだった。
 俺がそれまで厄介になった、どんなお屋敷にも引けを取らないぐらい立派な家に住んでて、
 もう、その家どころか、寝室からも出られそうにないぐらい、弱ってた。
 そして、なのに、いろんな歌を知ってて、次から次へと覚えろって言う。
……他にすることもないから、そうした。
 家の門はいつも開いてたけど、どこかに行こうとかも、特に思わなかった。



 あるとき、こんなやりとりもあった。
『親には、なんて思ってる?』
 別に……ふつう。あ、感謝してる。
『感謝?』
 うん、感謝しなきゃいけないって、言うでしょ?
『……お前は、怒ってもいいと思うよ。
 お前がそれをしたいなら』



 その人が昔何をしてたのかとか、なんで今俺にこんなことをしてるのかとかは、別に、聞かなかった。
 レパートリーをだいたい覚えたあたりで、その人は亡くなった。



 その時のためにあつらえられた服をもらって、たくさんの人の前で、鎮魂の歌を、歌った。
 わかってるなら、歌ってもよかったんだ。
   そうだろう?


 葬式が終わってからぼーっとしてたら、式の采配が終わった最初のお兄ちゃんがまた来て、訊く。
『君、これからどうする』
 お兄さんの専属の楽師になろうか?
   それより、私は君にやってほしいことがあるなあ』
 
 それは何かって、俺は聞いた。
 渡されたのは、まとまったお金の入った袋だった。
『しばらく世の中を見ておいで』と、一言。
 たいていのもの、もう見てる、とは、答えなかった。

 
 そうしたら、俺はあんたの歌を全部、歌えるようになるのかい?


 
 俺は袋を受け取った。
 そして、
「そういえば、俺、妹がいたんだっけ」
 って言って、初めて、その家の門を、あとにしたんだ。

 

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